経理として働きたいけれど、自分の能力で大丈夫か不安になることがあります。
とくに以下悩みをもっている人は多いです。
●経理転職におけるスキルや資格の悩み
・簿記の知識はどれくらい必要なのか?
・MOSのようなPCスキルはいる?
・転職に有利になる資格を知りたい
このような悩みを解決するには、実際に経理として働いている人に聞いてみるのが手っ取り早いです。
そこで、外資系企業の経理部門で働くKさんに経理に必要な資格やスキルについて聞きました。
Kさんの転職に関する記事は以下でも紹介しています。
●Kさんが経理に転職したときの体験談
●Kさんが経理に転職するまでにやったこと
経理転職で有利になる資格やスキルの一覧
私は未経験から経理(外資系企業)に転職しました。
そのため実際の転職活動や経理業務を通じて、転職に必要な資格やスキルを肌で感じています。
実は、経理には有利になる資格・スキルもあれば、効果のない資格・スキルもあります。
そこで、以下で経理に必要な「資格」と「スキル」について紹介していきます。
経理への転職で有利になる資格
★★★|必須
★★☆|あるとトクする
★☆☆|なくてもよい
☆☆☆|特別
資格名 | 必須度 | 理由 |
---|---|---|
簿記3 | ★★★ | ・経理なら簿記3級レベルの知識は最低限必要 →保有してないと転職で企業から信頼をもらえない ・この資格以外の強みがあることが必須 |
簿記2 | ★★☆ | ・経理の基礎レベル →簿記の場合、1級の保有率は低いため2級があれば知識は問題ないと認識される |
FASS検定 | ★★☆ | 認知度は低いが、即戦力となるアピールになる |
MOS | ★☆☆ | 資格ではなく実務経験でエクセル等のオフィスソフトが使用できることを説明できれば十分 |
公認会計士 | ☆☆☆(特別) | 会計のプロ資格 →資格だけで企業から信頼を得ることができる 単なる転職のし易さだけではなく、給与の交渉などもできる。 |
税理士 | ☆☆☆(特別) | 税務のプロ資格 →資格を取得にために会計を学ぶため企業から信頼を得ることができる。 |
経理への転職で有利になるスキル・能力
スキル名 | 具体事例 | 説明 |
---|---|---|
経理の数字を読む力 | 簿記3級レベル | 経理業務をする上で基本的知識 |
論理的思考力 | ロジカルシンキング、クリティカルシンキング | 経理業務のルールや法的理解を他人に説明する能力 |
コミュニケーションスキル | 柔軟なコミュニケーション | 資料提出の依頼や交渉 |
パソコンスキル | タイピング、ショートカットキー | OutlookやExcelなどを使用するための業務スピード |
エクセル作業効率化 | エクセル関数、エクセルマクロ | 繰り返し作業が多いため、マクロを使用できれば大幅な業務時間短縮が可能 |
それでは、以下で資格やスキルについて詳しくお伝えしていきます。
経理転職で有利になる資格
経理として働くことを考えると、資格が気になります。しかしどの資格を取れば、どのくらいトクするのか分かりません。
例えば、簿記は初級、3級から1級まであります。しかし、経理転職で有利になるのは何級レベルなのでしょうか。
また、公認会計士や税理士ような国家資格があると、経理職にはどのような利点があるのでしょうか。
これらの疑問は実際に経理職として働いてみるとよく分かります。
そこで、以下の資格について詳しく経理転職での必要性について紹介していきます。
必須資格|★★★
-簿記3
あるとトクする資格|★★☆
-簿記2
-FASS検定
なくてもよい資格|★☆☆
-MOS
特別資格|☆☆☆
-公認会計士
-税理士
以下でお伝えしていきます。
必須資格|簿記3級
簿記3級は必須レベルになります。なぜなら。簿記3級の知識は経理の基礎だからです。
資格のありなしは直接仕事に関係はありませんが、簿記3級は経理の仕事をする上で必要最低限の知識なのです。
例えば、「仕訳」と言われる経理特有の帳簿の記録を業務上毎日のように行います。
仕訳には以下が含まれます。
●仕訳に含まれること
・仕入先への代金の支払い
・お客様から得た売上
・減価償却(PCのような長期間使用するモノを使用期間に合わせてコスト計上すること)
上記は仕訳として記録されます。
仕訳には「借方」「貸方」という概念があり、取引の内容によってどう仕訳をするか一定のルールがあります。
このように仕訳という言葉は、業務で確実に使うことになります。
そして簿記3級では、仕訳を含めた基本的な知識を身につけるための資格です。
実務に生きる資格なので、転職を考えている方は簿記3級の取得は必須です。
あるとトクする資格1|簿記2級
簿記2級があると、会社のビジネスの全体像や仕組みを読み取る力を身に付けることができます。
そのため専門的な経理業務を行うことができることから、転職の際に有利です。
たとえば、決算書は経営が「黒字」か「赤字」か、「儲かっている」か「儲かっていない」かといった会社の成績を表すものです。
代表的なものに「貸借対照表」と「損益計算書」があります。
●貸借対照表
→財産をどのくらい保有しているか、借金はどのくらいあるかを公開することを目的としています。
●損益計算書
売上がいくらで、それに対しかかった費用はいくらであったのかといった儲けを公開することを目的としています。
これらの情報が出資者が会社への出資の判断材料です。
そのため、決算書を作れるかどうかは経理としての人材価値を大きく左右します。
したがって決算書の仕組みと作成方法を学ぶことができる簿記2級は、より専門的な経理業務をこなすために重要になるのです。
あるとトクする資格2|FASS検定
FASSとはFinance Accounting Skill Standardの略です。
この検定では経理・財務の実務に置ける一般常識について問われます。
簿記との違いは合否判定ではなく、スコア判定です。
FASSと簿記との違い
●FASS検定|スコア判定(5段階)
●簿記|合否判定
FASS検定は経理の担当者目線としての知識を問われる試験で、実際のビジネスシーンを題材にした設問が多いです。
たとえばFASS検定では、資金分野の知識が出題されます。
これは経理の基本業務である資金管理をする上で必要な知識です。
この知識がないと、正しい帳簿の付け方やチェックのポイントを踏まえた資金管理ができません。
もちろん実務を通して学ぶことができますが、FASS検定であらかじめ学んでいると業務にすぐ対応できます。
なお実際のFASS検定では、以下のような問題で選択式です。
●FASS検定の問題
・年度決算処理を行うにあたり事前に取り決めておくべきことは何か
・法人税上の交際費等に該当するものはどういったものがあるか
・現金を管理するにあたり留意すべきポイントは何か
FASS検定では数字を計算することがメインではなく、経理業務や決算業務を行うための知識を問うものです。
そのため簿記資格とFASS検定スコアを持っていれば、企業から経理を任せる人材として評価されやすくなります。
なくてもよい資格|MOS
MOSとはMicrosoft Office Specialistです。
MOSとは、ワードやエクセルなどのマイクロソフトオフィスがどれだけ使えるかを示す資格です。
しかしMOSで出題される問題は、当然知っているべきレベルばかりです。
そのため、MOSはアピールになるほどの資格ではないのです。
実際、面接で「ワードやエクセルの技術はどれくらい?」と聞かれて、「前職では普段から使っていました」と回答すれば、問題ありません。
また以下の記事でお伝えしているとおり、MOSの場合は「実績>>>資格」です。
つまり、実績を話せるほうが良いです。MOSを持っていることより「エクセルで1000行分のデータを毎月処理していました」と回答する方が信頼してもらえます。
そのため、経理職への転職のために無理してMOSを取得する必要はありません。
特別資格1|公認会計士
公認会計士は転職のためにこだわって資格取得を目指す必要はありません。
なぜなら試験は難易度が高く、国が認める業務経験が一定期間以上なければ資格を取得できません。
そのため、一般企業の経理への転職のために目指す資格ではないと思います。
実際に一般企業に勤めている方で資格を保持されている人を知っていますが、学生時代に資格を取得し監査法人に就職していました。
そして、その後に一般企業に転職しています。
公認会計士は専門知識を学ぶことから、経理として働くにはこの上ないほどの資格です。
そのため、保有している方は非常に価値のある人材と認識されます。
しかし、経理職で公認会計士をもっている人はほとんどいません。
したがって転職のためにこだわって資格取得を目指す必要はありません。
特別な資格|税理士
公認会計士と同様に難関試験であり、一般企業の経理への転職のために取得する資格ではありません。
ただ税理士は税金に関するスペシャリストであり、会計についても専門的な知識を有しているため、経理として働く場合は重宝される存在です。
たとえば企業である以上、色々な税金を納税する義務が生じます。代表的なものは消費税や法人税といったものです。
当然税金に関する正しい理解がなければ難しい業務であるため、税理士の資格を保持していれば経理部署において価値のある存在になれます。
しかし、資格取得には非常に多くの時間を要するため、経理への転職のために資格取得を目指す必要はありません。
経理転職に求められる5つのスキル
それでは、経理転職に求められる5つのスキルについて紹介していきます。
●経理に必要な5つのスキル
スキル1|数字を読む力
スキル2|論理的思考力
スキル3|コミュニケーションスキル
スキル4|パソコンスキル
スキル5|エクセル作業効率化
それでは以下で詳しく紹介していきます。
スキル1|数字を読む力
経理には、数字を読む力が求められます。数字を読む力とは、計算能力ではありません。
なぜなら正確な計算はPCで行うからです。実際、売上や経費が入ったデータは経理ソフトやエクセルで計算します。
数字を読む力とはビジネスシーンや日常の中で目にする数字の意味や規模感をパッと把握する感覚のことをいいます。
例えば、「1年間の売り上げが1億円の会社のひと月あたりの売り上げはいくらですか」という問いに対して「約830万円」とパッとイメージで答えが出てくるかどうかです。
実際、経理部署のミーティングや社内メールでの情報のやり取りの際には「〇〇の商品が前年比+110%売れたので今期の決算は〇〇%の増益が見込まれます」のようなやり取りがあります。
このようなシチュエーションの時に、電卓を叩く必要はなく、頭の中でパッと概算数字が出てくることが重要です。
企業の規模にもよりますが、経理となると個人の金銭の何十倍、何百倍もの金額を扱うことになります。
そのため「数字を読む力」が重要なスキルとなります。
スキル2|ロジカルシンキングや論理的思考力
経理の仕事は説明できることが大切です。
なぜなら、経理仕事の流れを説明する必要があるからです。
たとえば営業、企画や人事などの部署でお金の出入りがあり、「どうやって会計処理をすればよいか」と相談されます。
通常、会計処理の方法は会社にルールやマニュアルがありますが、この場合「マニュアルに書いてあります」といったような対応は論外です。
経理以外の部署にとって会計ルールなんて興味がないからです。
そのため、経理のルールを論理的に説明し相手に納得してもらう必要があるのです。
例えば、営業の部署からはよく接待交際費の精算の仕方について相談されます。
領収書の書き方や金額の上限額、交際費として認められる範囲などです。
実際、領収書には会社名を書いてもらうのが基本ルールです。
それは会社の接待の領収書だということを証明してもらい、不正支出等のリスクを防ぐ目的があるからです。
このようなルールを論理的に説明するためには、一つ一つのルールがなぜあるのか自分自身が理解していなければいけません。
そのため、物事をロジカルに考えることができる力は必要なスキルとなるのです。
論理的思考については以下で紹介しています。
スキル3|コミニュケーションスキル
経理の仕事は社内のさまざまな部署と関わります。
なぜなら、どの部署も必ずお金の出入りがあるからです。
例えば、旅費等の経費精算や決算時期の資料提出はどの会社でも必ずあります。
そのため、他部署の人とコミュニケーションをとって仕事を進めていく必要があるのです。
しかし、「経理上のルールだから」と依頼しても他部署の人は話を聞いてくれません。
実際、私は他部署の担当者に経費精算するための書類の提出を依頼をしたことがあります。
しかし記載に不備があるものが提出されたり、期日まで提出されなかった等の失敗をしてしまいました。
もちろん書類作成のためのマニュアルやスケジュールはルールに記載されていました。
しかし、相手の部署の担当者の経験が浅かったことから、事前にスケジュールやよくある記載間違い等を先に教えてあげれば良かったと反省しました。
したがって、経理で働くには原則のルールを守ることを念頭におきつつ、相手の状況を踏まえてコミュニケーションをとれるスキルが必要になります。
スキル4|パソコンスキル
経理はデスクワークが多いため、パソコンスキルが高い方が有利です。
なぜならPCのルーチンワークが多いからです。
例えば、経理業務ではエクセルを使用したり会計ソフトを使ったりします。
実際、私が勤務していた企業ではPCA会計DXを使っていました。
このソフトを使って、予算管理や日々の伝票入力、支出や入金管理、各会計帳簿の作成や決算資料の出力、または経営分析など経理が行う業務の多くを進めていきます。
そのほかにも会計ソフトを使って出力したエクセルデータを加工して分析や帳簿を作る事も多いです。
このようにPCを使った業務が大半です。
そのため、パソコンスキルが高いほど生産性が高くなります。
とくにタイピングやショートカットキーのようなスキルは基本なので、出来るようになっておくことが大切です。
以下でタイピングやショートカットキーの記事について紹介しています。ぜひ合わせて読んでみて下さい。
スキル5|エクセル作業の効率化
経理の場合、エクセルなどのオフィスソフトを使用することは多いです。
そのため、エクセル業務を効率的に処理するのが重要になってきます。
たとえば、私は多くの部署から同じフォーマットで提出させ、それを他のシートに集計し、分析する仕事を担当していました。
ただ関連部署が多く、集計表のいろいろなシートにデータを貼り付けなければいけませんでした。
そのため、とても時間がかかっていたのです。
今にしてみれば、エクセルVBAのようなスキルを使えば、自動で処理ができます。
以下の動画で示しているとおり、エクセルVBAであれば自動で請求書作成することが可能です。
エクセルマクロについて詳しく知りたい人は以下の記事がお勧めです。
ただ私が経理に転職した当初は、なかなかVBAに手をつけることができませんでした。
しかし、仕事に慣れてきた頃にエクセルVBAのスキルを磨くことにしました。
実際にVBAを習得すると、当初のやり方に比べて仕事を月20時間程の効率化をすることができるようになりました。
経理は毎日、毎週、毎月行うようなルーティンワークがたくさんあるので、効率化の効果は大きいです。
このようなパソコンスキルの効率化は、自宅のPCを活用して学ぶことができます。
またテキストを買って独学で学ぶことや通信教材を活用して学ぶという方法もあります。
経理資格がない人やパソコンスキルが低い人はどうなる?
ここまで経理に関する資格やスキルについて紹介してきました。
それでは、上記で紹介した資格やスキルがないとどうなるでしょうか。
それは以下です。
●資格やスキルがないとどうなるか?
・そもそも転職できない
・転職後の仕事で困る
そもそも転職できない
経理として働くと、以下のような知識は知っていて当然の環境で働くことになります。
経理特有の単語 | 内容 |
---|---|
勘定科目 | 仕訳や財務諸表などに用いる表示金額の内容を示す名称。 ※事項以降で示している経理や売掛金は勘定科目の一つ。 |
経費(旅費、消耗品費など) | 事業を行う上で必要なコスト。旅費や事務用品の購入代金としての消耗品費、電話代の通信費など |
売掛金 | 掛取引(代金の後払い)で販売した分の売上金額(商品の売上のみに使用) |
買掛金 | 代金の後払いで商品を仕入れた場合の仕入金額(商品の仕入のみに使用) |
連結決算 | 親会社だけではなく、子会社や関連会社を含めたグループ全体の決算のこと。大企業の多くは子会社を保有しており、連結決算により決算書を公開している。 |
上記の単語は、経理の業務上よく使われます。
そのため、職務経歴書や履歴書の内容や面接の質疑応答で経理知識がないと分かった時点で、不合格になってしまいます。
転職後の仕事で困る
仮に経理への転職がうまくいったとしても、経理知識をもっていないとチームや上司からの信頼を得ることができません。
もし、私の職場に上記の表で出てくる単語を知らない人が転職してきたら、「この人は経理の仕事ができない人だ」と感じます。
上記の知識がないということは、そのくらいのレベルです。
またパソコンスキルがない人も転職後に苦労します。なぜなら業務の9割はPC上で行うからです。
その中でも、会計ソフトとエクセルを使用することが多いです。
例えば、「参照先のデータをコピー→別のシートにペーストを繰り返して集計表を作る」といった作業をしたことがある人は多いはずです。
しかし、このような業務をマウスでコピペしていては仕事が終わりません。
このように資格やスキルがないと、転職に合格できないだけでなく転職後の仕事にも困ることになります。
経理へ転職するならスキル不足を補うこと
経理の資格やスキルでは以下が最低ラインです。
●経理の資格やスキルで最低限必要なこと
・簿記3級レベル
・エクセルを含めたPCスキル
これらは働きながらでも独学で学ぶことができます。
本気で転職を考える方はスキル不足を補いつつ転職活動を進めることをお勧めします。
資格取得のための勉強と聞くと気乗りしない人も多いです。
しかし簿記は経理の基本的な知識を養える資格で、実務に確実に活きます。
またパソコンスキルは仕事の生産性を向上させてくれます。
単なる転職のための資格取得ではなく、将来に向けた投資と認識し、勉強してみることをお勧めします。
転職に関する経験談はこちらでも紹介しています。