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仕事で業務マニュアルを作成する際には、読んでもらえるような業務マニュアルを書くこと必要があります。どれだけイイ資料を作っても、実際に仕事をする人に読まれないモノでは意味がありません。
ただ、多くの人が書いた業務マニュアルは担当者に読まれていません。これは、単純にマニュアルの内容がわかりづらいからです。担当者に読まれるようなマニュアルを作成するためには、いくつかのポイントを意識した上で作成する必要があるのです。
そこで、担当者に読んでもらえ業務マニュアルを作成するために意識すべき3つのポイントについて解説します。3つのポイントとは「読まない」「理解しない」「行動しない」の3つのハードルを超えることです。
- ポイント1|Not Read|担当者は読まない
- ポイント2|Not Understand|担当者は理解しない
- ポイント3|Not Act|担当者は行動しない
- 業務マニュアル作成より業務量を減らす
- 読んでもらえる業務マニュアルを作ろう
ポイント1|Not Read|担当者は読まない
多くの人はなぜか「自分が作った業務マニュアル(手順書)は必ず読んでもらえる」と思っています。しかし、実際には違います。
他人はあなたのマニュアルにそもそも興味がありません。できれば、マニュアルなんて一文字も読みたいとは思っていません。そのため、マニュアルを作成する側は、担当者が「マニュアルなんて絶対に読まない、読みたくない」状態だと考える必要があります。
これは、家電の取扱説明書を考えれば分かると思います。ほとんどの方は取扱説明書を読もうとはしないでしょうか。中身をしっかり読まずに、必要な部分だけ流し読みします。
残念ながら、どれだけ業務マニュアルの中身が素晴らしかったとしても、読んでもらえなければ意味がありません。
このような読み手の行動を理解しなければ、そもそも良いマニュアルを書くことが出来なくなってしまいます。
文章を読みたくないと思っている担当者に対して、「どのようにすれば読ませることができるか」を考え始めると、ようやく業務手順書の書き方が見えてきます。
Not Read(読まない)を防ぐには
では、マニュアルを読んでもらえるには、どういった対策が必要でしょうか?
それは、手順書の中で読んでもらいたい部分を強調し、注意を引くことです。
・見出しのフォントを変える
・必要なことをチェックリスト化する
・フローチャートなどで図解する
・誰が(Who)を明確に書く
といった対策があります。これは、新聞や週刊誌を参考にするとわかりやすいです。
新聞では見出しがあり、30字程度でメッセージのまとめを述べています。これにより、読者をひきつけます。また、写真や図を入れることで読みやすくしています。他にも、「製薬メーカーが~」と記載することによって、製薬企業に勤めている人の注意を引きます。
これは、マニュアル作成にも活かせます。手順書のタイトルに「営業時のクレーム対応手順」と記載して、営業担当者に「自分のことだ」と思わせるような書き方をするといったテクニックを使います。
普段、みかける新聞や週刊誌といったありふれたモノに実は大きなヒントがあります。
ポイント2|Not Understand|担当者は理解しない
たとえ文章を読ませることが出来ても、業務マニュアルを理解できないことがあります。なぜなら、多くの人は、業務マニュアル作成者の視点で作成してしまうからです。
たとえば、ベテランからすればいつも使う単語でも、初心者からすれば難しい概念や知らない単語に見えます。
実際に、「ISOのサイトから情報を調べる」とマニュアルを書いてあるとします。これは、「ISOとは何か?」、「ISOのサイトはどれか?」を知っている人からすれば当たり前のことです。しかし、ISOの知識が乏しい人からすると、理解することができません。
このように、マニュアル作成側の知識を前提にしてしまうと、難しい概念や単語を理解してもらえません。
また、複数の意味が考えられる文章を書いてしまう場合があります。
たとえば、「佐藤さんと鈴木さんの子供に会った」という文章をあります。これは、「佐藤さんと鈴木さんのそれぞれの子供に会った」と理解できますし、「佐藤さんと鈴木さん夫妻の子供に会った」とも理解できます。
業務マニュアルの記載内容を誤って理解したことで、担当者が仕事を間違えることは少なくありません。
このようにマニュアルの作成側からすれば、当たり前に分かることでも、読む側からは理解が難しいことはたくさんいます。マニュアル作成側は、「自分の文章は理解されない」という考えを頭に入れておく必要があります。
Not Understand(理解しない)を防ぐには
では、どういった対策をすれば、手順書の内容を理解してもらえるのでしょうか?
それは、手順書をできるだけカンタンに書くことです。たとえば、以下のことがあります。
・一文を短く書く
・5W1H「なぜ、いつ、どこで、誰が、何を、どうやって」を書く
・時系列に書く
・専門用語を使わない
といった対策があります。
知識がある人ほど、文章が長くなりがちで、主語が抜けがちです。また、経験豊富な人しか分からない用語を使ってしまいます。それは、自分が理解できているからです。自分で理解できていることは、書かなくても分かるものです。
しかし、これから業務をやろうとする人からすれば、文章が長かったり、主語が抜けていたりすると、しっかりと理解できません。
そのため、自分がはじめて業務をしたときを思い出しながら、一文を短くして、5W1Hを明確にして書くといいでしょう。
ポイント3|Not Act|担当者は行動しない
もし内容を理解できたとしても、担当者は行動しません。やろうかと悩んでいる内にお昼休みや定時の時間が近づくと、「後でいいや!」と思って、そのまま忘れてしまいます。
それは、実際に何をやればいいのか分からなかったり、この業務をやるメリットが分からなかったりするからです。
たとえば、業務マニュアルに、「相手のことを考えて文章を書く」とあったとします。しかし、「相手のことを考えて文章を書く」といわれても、曖昧(あいまい)です。何をすればいいのかわかりません。
実際、相手のことを考えた結果、進捗を理解してもらうために毎日メールで報告する人もいれば、忙しいだろうと考えて週一でメール報告する人もいます。
そのため、「○○を月、金で報告する」といったように明確に決めると行動しやすくなります。
また、この業務をやるメリットがわからないと、担当者は行動する気になれません。したがって、この業務をやったら、評価をするといったメリットを用意しておきます。そうすると、担当者の行動を引き出せることがあります。
このように、どれだけ業務マニュアルの内容を理解できたとしても「相手は絶対に行動しようとしない」と認識しければいけません。
Not Act(行動しない)を防ぐには
行動してもらうための対策は、上述の通り
・明確にやることを示す
・メリットを伝える/デメリットを伝える
といった対策があります。
「○○をしたら、△△になる」といった具体的なイメージをもたせることを意識して、業務マニュアルを作成します。
たとえば、「仕事の進捗を月曜日と木曜日に報告したら、仕事の評価」をするとすれば、マニュアルを読んでいる側からすると、行動しやすいです。
また、「これができるようになれば、部署のスペシャリストになれる」といった仕事の希少性を訴求するのも一つの手です。
担当者が仕事の重要性を理解して、具体的に何をやるかを業務マニュアルから読み取ってもらえれば、担当者も気持ちよく仕事を進めることができます。
このように、マニュアル作成側は、「担当者側にしてほしいこと」、「その結果として担当者にもたらされるモノ」を伝える必要があります。
業務マニュアル作成より業務量を減らす
業務マニュアルの書き方のコツを記載してきましたが、どうしても担当者に手順書通りに行動してもらえないことがあります。
たとえば、月末処理で何百、何千といったデータを処理する場合です。こういった仕事は、業務マニュアルを作成しても、業務量が減るワケではありません。
そもそも業務量が多いことで、ミスが生まれたり、他の仕事が回らなくなっていたりします。つまり、業務量を減らさないと、解決しません。
このようなケースは、エクセルマクロのような自動化ツールを活用して、作業そのものの負担を減らすことを検討します。
エクセルマクロについては、こちらの記事で解説していますので、あわせて読んでみてください。
読んでもらえる業務マニュアルを作ろう
ここで紹介した3つのポイントを意識すれば、読んでもらえる業務マニュアルを作成できます。
しかし、これらの「読まない・理解しない・行動しない」を知っている人であっても、実際にこれらを考えて手順書を作成している人は少ないです。
頭では分かっていたとしても、この業務マニュアルがあれば、「マニュアル通りに、仕事をやってくれるだろう」と勘違いします。実際、マニュアルをすべて読む人はいません。せいぜい流し読みをする程度です。
この現実に直視して、業務マニュアルを作成する必要があります。実際、私も同じように気をつけています。たとえば、あなたはこのウェブサイトの記事を読んでくれてはいます。
しかし、私が伝えたい内容を理解し行動してもらえるかと言われると、必ずしもそうではないでしょう。とはいえ、理解してもらい行動してもらってこそはじめて記事としての価値をうみます。そのため、私は文章を改善していく必要があります。
担当者に理解し、行動もらえる業務マニュアルを作成してこそ意味がある。このことを念頭に入れて、業務マニュアルを作成できるようになれば、自然と読まれる業務マニュアルが書けるようになります。
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