仕事をしていると、ムダと感じることがあります。上司や取引先の指示が途中で変わったり、他部署が作成した資料に不足があったりするのは、誰もが一度は経験しているはずです。
このようなやり直しは、本来やらなくてもいいことであり、不要な作業です。しかし、どれだけムダに感じていても、ムダを減らすことはカンタンではありません。
それは、「ムダを減らそう」と改善をしても、その改善がうまくいかないからです。その結果、ムダだらけの仕事になってしまいます。
もし、本当に仕事を効率化したいなら、ムダの原因を正しく見つけ、効果の大きい解決策を考える必要があります。
そのためには、仕事のムダを見つけたり、効率化や改善のアイデアを出したりするための正しい方法を知っておく必要があります。
- そもそも仕事にムダが多いのはなぜか。ムダを減らすには何が必要か
- ムダな仕事の見つけ方|MPU
- 仕事を効率化するポイントを見極める|ICOMで考える
- 仕事を改善するときのアイデアを出す|ECRS
- 実際に仕事を改善してみよう
そもそも仕事にムダが多いのはなぜか。ムダを減らすには何が必要か
仕事をしていると、「なぜこれが必要なのだろう?」と感じる瞬間があります。実際はやらなくていいことも少なくありません。
以前、私の同僚は、取引先から送られてくるメールチェックを手動で行っていました。私からすれば、メールチェックを自動化して、10分程度で処理できる作業です。
しかし、手動でアナログに作業した結果、30分以上かかった上に、チェック漏れでやり直しを行っていました。
実は、ムダな仕事が多いのは、非効率的な仕事をしていることに気づいていないことが原因です。実際、多くの人は、ムダな仕事をしていても、ギモンを感じないまま続けています。
ただし、ムダに気づくのは、カンタンではありません。それは、作業に慣れてしまうからです。
たとえば、新人社員のような新しい視点がきっかけで、効率化されることがあります。仕事ができるベテランでさえも、仕事が当たり前になってしまうと、本人が気づくことができないのです。
仕事のムダを減らすためには、ムダを見える化すること
ムダをなくして効率化をするためには、ムダを相手に気づいてもらう必要があります。しかし、「これはムダです」と思いつきのように伝えるだけでは、相手が気づくことはありません。むしろ反発されるだけです。
そこで必要になってくるのが、ムダの度合いを数値化したり、仕事の流れの悪さを図解したりすることです。
人は、数字による比較や、絵で滞っている様子が見えると、理解が深まります。
たとえば、プレゼンテーションで、シンプルな図や分かりやすいグラフを使ったほうがいいといわれます。これは、シンプルであればあるほど、相手が深く理解できるからです。
しかし、多くの場合、見える化を行うことなく、思いつきの発想で改善を進めようとします。その結果、効率化に失敗します。
そこで、思いつきのアイデアや改善案ではなく、相手に「なるほど、これは効率化を行う必要がある」とうならせるような気づきを与える必要があるのです。
それでは、正しく仕事を効率化するために必要なテクニックやアイデアを出す方法を紹介します。
ムダな仕事の見つけ方|MPU
仕事をしていて、「なんとなくムダな気がする・・・」と感じるときがあります。しかし、ムダを感じるだけでは、仕事を効率化することはできません。
直感に頼るだけではなく、仕事のムダとなっている理由を言葉で説明できる必要があります。そうすれば、「これはムダ」、「あれは必要」と仕分けすることができます。
そこで、MPUのフレームワークを使います。MPUとは以下の3つの頭文字をとった言葉で、仕事のムダを見抜くためのフレームワークです。
1.Method Ross(方法ロス)
2.Performance Ross(能率ロス)
3.Utilization Ross(活用ロス)
MPUを理解しておくと、仕事でムダを感じたとき、どんな種類のムダかどうかがすぐに分かるようになります。それでは、MPUについて説明していきます。
ムダを見つける方法1|Method Ross(方法ロス)
方法ロスとは、作業のやり方によるロスです。たとえば、エクセルでデータ分析をやる場合、やり方によって、作業時間に違いが出ます。
実際に、手入力でやると半日かかる仕事でも、VBAでプログラムを組めば、ボタン一つで数十秒で終わります。やり方一つで、作業の効率が大きく変化します。
他にも、機械設備の配置によって、運搬作業のロスや、業務フローで不要な二重チェックなども方法ロスの一つです。
ムダを見つける方法2|Performance Ross(能率ロス)
能率ロスとは、仕事の習熟度による個人間のバラツキです。たとえば、ベテランの人だと経験上、理解していることでも、新人だと、理解するところから始める必要があります。
そのときに、生じる試行錯誤の時間や、資料不備による出戻りによって、ムダが生じます。これが、能率ロスです。他にも、情報共有不足による資料作成のミスや、やる気の差による作業のムラも能率ロスに含まれます。
ムダを見つける方法3|Utilization Ross(活用ロス)
活用ロスとは、仕事をする時間としない時間のムラです。たとえば、月末に忙しい部署があるとします。その部署は、月末を除くと、そこまで忙しくありません。
忙しくない時期があるにも関わらず、働く時間は変わらないため、忙しくない時期は空き時間が発生します。これが、活用ロスです。
他にも、生産現場では、活用ロスが生じやすいです。たとえば、毎日ずっと稼働する設備がある場合、この設備の能力によって生産高が決まります。
つまり、停止している設備を活用できれば、より多くの生産を行うことができます。このように停止時間があれば、他のことに活用できる時間があることを意味しています。
ムダを見つけることで、課題が見つかる
ここで紹介したMPUの視点を使えば、ムダを見つけやすくになります。これまで、なんとなくムダだと思っていたことが、明確にムダだと分かるようになります。
しかし、「どこがムダなのか?」が分かるだけでは、効率化を行うことはできません。なぜなら、どう変えたらいいのかがわからないからです。
実際に仕事を効率化したいなら、ムダに対して「どう改善するか」まで深堀りする必要があります。そうしないと、業務改善を上司や同僚に提案することができません。
そこで、ムダを見極めて、どこを変えるべきか説明できるようになるための方法を紹介します。
仕事を効率化するポイントを見極める|ICOMで考える
上述したとおり、MPUを使えば、どんなムダが発生しているのかが分かるようになります。しかし、そのムダが発生している原因を見つけるには、他の方法を使います。
その方法は、ICOMのフレームワークです。ICOMとは、以下の4つの頭文字をとった言葉で、仕事のムダの原因を見つけるためのフレームワークです。
1|Input入力情報
2|Control判断基準
3|Output出力情報
4|Mechanism環境
ICOMを理解しておくと、仕事のムダが発生している原因を把握することができます。それでは、ICOMについて説明していきます。
ここでは、売上を経営陣に報告する仕事を例にして考えてみます。
効率化ポイント1|Input入力情報
インプット(入力情報)とは、他の部署から受け取る情報です。経営陣に報告するために、あなたが売上データを取りまとめる場合、インプットとは各拠点の売上情報を指します。
会社全体の売上データを作成するとき、大阪、福岡、名古屋などの拠点の売上情報をもとに作成する必要があります。
そのため、拠点の売上情報に抜けや漏れがあると、正確なデータを計算できません。したがって、仕事をスムーズにこなすには、各拠点から正しいインプットがもらえるようにする必要があります。
もし、抜けや漏れが発生していて、業務の戻しが発生する場合は、対策を講じる必要があります。たとえば、エクセルに正しく記入されていないセルがあれば、アラートメッセージを出すようにするといった対策があります。
効率化ポイント2|Control判断基準
Control(判断基準)とは、どんな情報が必要か決めることです。売上を経営陣に報告する場合、各拠点の総売り上げのデータは必須です。しかし、各拠点の製品別の売上まで必要かと聞かれたら、どうでしょうか。
この場合、最終報告資料にに、各拠点の製品別の売上情報を載せるのであれば、各拠点の製品別の売上情報もインプット情報として入手する必要があります。
しかし、どんな情報を必要とするかをあらかじめ決めておかないと、拠点間でインプットがバラバラになります。その結果、拠点Aでは、製品別の売上まで提出しているが、拠点Bでは、拠点の総売り上げのみを提出するといったことが起こるのです。
このようなバラツキが生じるのは、判断基準が曖昧になっていることで生じます。もし、バラツキをなくすなら、判断基準を決め、必要情報を事前に明確化しておく必要があります。
効率化ポイント3|Output出力情報
Outputとは、出力情報のことで、仕事の成果です。売上を経営陣に報告する場合、Outputとは、経営陣に報告する資料のことです。
実は、outputが不明確なことは少なくありません。そして、outputが不明確だと、やり直し作業が多発します。
そもそも、売上情報を確認することで、何をするかといえば、売上情報を使って、経営陣が何かを判断するために利用します。
たとえば、売れ行きがいい拠点とそうでない拠点を見つけて、継続か撤退か判断することに使います。
この場合、経営陣が継続か撤退か判断をするために、どんなデータを参考にするのでしょうか。そのデータこそ、Outputの項目となります。
もし、どんなデータを参考するか決まっていない場合、「やっぱりあのデータも必要だ」となって、作業のやり直しが発生します。そして、本来やる必要のなかった仕事をするハメになります。
効率化ポイント4|Mechanism環境
Mechanismとは、組織、人、システムのことで、仕事を行う環境・状況を指します。
たとえば、各拠点からの情報をもとに、売上情報を整理する場合、情報量によっては、1人でやるには多すぎる場合があります。
もし、47都道府県の全拠点の売上情報を入手する場合、量が多く、かなり手間のかかる仕事です。また、情報を入手する方法がPDFだったり、メールの文面だったりすると、一つ一つ手入力で情報を整理する必要が生じます。
このように使用しているシステムや人員によって、仕事が思うように進まないことがあります。
改善方法の一つとして、システム化することが挙げられます。エクセルにフォーマットを揃えて、関数やマクロを利用して、仕事を自動で処理できるようにすると、簡単に仕事を処理することができます。
仕事を改善するときのアイデアを出す|ECRS
ICOMを使うことで、ムダの原因が分かるようになります。しかし、原因が分かっても解決策を講じないと、ムダを削減することはできません。効率化を行うための策はECRSのフレームワークを使って考えます。
ECRSとは、以下の4つの頭文字をとった言葉で、仕事を改善するときのアイデアを出すためのフレームワークです。
1|Eliminate
2|Combine
3|Rearrange
4|Simplify
ECRSを理解しておくと、改善効果の大きい解決策を考えることができます。それでは、ECRSについて説明していきます。
ここでは、売上を経営陣に報告する仕事を例にして考えてみます。
改善アイデア1|Eliminateなくす
Eliminateとは、排除のことです。そもそも「その仕事をなくせないか?」、「本当にやる意味はあるのか?」ということを検討します。
実は、本来やらなくてもいい仕事はたくさんあります。
売上を経営陣に報告する場合、売上報告をして、経営陣が何かの判断をするのが目的です。したがって、判断に使わない情報は、不要です。
もし、売上情報の他に、勤務時間の情報を報告書に載せていたとします。この場合、勤務時間の情報があったとしても、何か判断するためには使うことはありません。
判断に使わない情報であれば、入手からデータ分析までの行動は、すべてムダです。
このようにムダな作業そのものなくすことができれば、それまで費やしていた作業時間を、すべて他の仕事に充てることができるようになります。
ムダを排除することで、仕事が一気に効率化されます。ECRSのフレームワークの中で、Eliminateはもっとも大切な視点です。
改善アイデア2|Combine一緒にやる
Combineとは、仕事を結合したり、分離したりすることです。仕事を同時にやったり、別々にやったりすることで効率アップを狙います。
たとえば、売上のデータ分析を毎週行っているとします。しかし、本当に毎週データ分析が必要でしょうか?
月に一回にすれば、仕事量は、月に4回から1回になるため、大幅に仕事を減らすことができます。
このように、仕事を一回に集約することで、仕事の回数を減らすのがCombineです。
改善アイデア3|Rearrange
Rearrangeとは、仕事の順序やタイミングを調整することです。
売上を経営陣に報告するとき、作業量によっては、負荷の大きい仕事です。たとえば、47都道府県のデータ集計を1人の担当者に仕事が集中していると、他の仕事が滞ります。
そこで、担当者を割り振って並行で進めるように変更します。そうすることで、早く処理が進みます。
このように、仕事の順序を調整して、負荷を減らすのが、Rearrangeです。
改善アイデア4|Simplify
simplifyとは、仕事を簡素化することです。
売上を経営陣に報告するデータは毎月同じ形式で報告することが多いはずです。そのため、データ分析作業は自動で処理することが可能です。
実際、私の知り合いは、エクセルマクロのスキルをもっていたので、各拠点にエクセルのフォーマットを作成し、各拠点に入力してもらうようにしていました。
そして、データが入ったエクセルを定期的に送ってもらい、自動で売上データが抽出されるようにプログラムを組んでいました。
その結果、自動で情報を入手できるうようになり、手入力の作業がほぼゼロになりました。
このように、仕事を自動化したり、マニュアル化したりして、仕事を簡素化するのがSimplifyです。
ECRSをつかうときのコツ|E→CR→Sの順番で改善
ECRSの視点を利用するときは、コツがあります。それは、以下の順番で考えることです。
- Eliminate
- Combine or Rearrange
- Simplify
それは、1がもっとも効率化の効果が高いからです。逆に、3は、効率化の効果が小さいです。
たとえば、不要な報告書がある場合、それを排除することがベストな方法です。その仕事をしていた分の時間がまるまる節約できます。
2,C Rでは、報告書を他のレポートに入れ込むといった方法が考えられます。これは、報告書作成の作業はなくなりません。しかし、複数の報告書を一つに集約できるため、確認時間を減らすことができます。
3 Sでは、報告書の作成を自動化したり、マニュアルで仕組み化する方法が考えられます。これは、作業そのものを機械処理したり、マニュアルで誰でもできるようにしますが、作業がなくなるワケではありません。
あくまで、必要なことをシンプルに処理しないと、ムダなことをやるハメになってしまいます。したがって、Sは最後に考えるようにするのがコツです。
実際に仕事を改善してみよう
ここまで紹介した、改善のフレームワークを使えば、ムダの発見、原因分析、改善策まで正しいやり方で業務効率化を行うことができます。
しかし、やり方を知っていても、実際に改善のために行動をしないと、仕事はラクになりません。どれだけイイ知識も、実際に活用しなければ、宝の持ち腐れです。
ただ、これまで仕事を効率化した経験が少ない人が、いきなり複数の人や部署が関係する仕事を改善するのは難しいです。
ですので、まずは自分だけの仕事やチーム内の仕事を効率化してみることから始めるのをオススメします。このような知識は、小さく試していきながら、習得していくのがコツです。
実際に、私も会社の仕事を改善を始めたとき、身近な仕事から改善していきました。そして、少しずつ成功体験を積んで、他部署が絡むような仕事を効率化してきました。
ぜひ、まずはムダだと感じる部分に注目して、改善活動を始めてみましょう。
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